卒業式の翌日

 

卒業式の翌日、本来ならば春休みの終盤でそろそろ新学期の準備(宿題だけどね)で忙しくなる時期。

とある町の閑静な住宅街に一人、はたから見ればさぞや似使わない、というより・・・

「やっぱり、でかすぎたな〜〜、この花束(汗)」

すれ違う人々の視線が痛い。

わざと声に出して言ってみた。

それは花束・・・というより、花畑そのままバスケットに詰め込んだ・・・そんな感じの、

貧乏な、なけなしの小遣いで予算ギリギリ一杯使って買った、今の俺に出来る精一杯の・・・。

ぴんぽ〜〜〜ん!!

「(は〜〜い、どちら様?)」

「あっ、え〜〜と、に、虹野さんの、お、お宅でしょうか〜(汗)」

(あ〜〜〜、馬鹿馬鹿!!インターホンの脇に「虹野」って表札あるじゃん!!)

「(ぷっ・・・あははは〜〜、私、沙希よ)」

インターホンから、彼女がコロコロと笑う声が聞こえる。

耳が次第に熱くなっていくがわかった。

(きっと、顔も真っ赤なんだろうな)

「(ちょっと手が離せないから、上がってきて)」

 

俺、速水駿太18歳、昨日卒業式を向かえ明後日からはJリーガーだ。

一昨日までは、雨の日も風の日も休まず部活に明け暮れていた。

これじゃぁ彼女なんて出来ない・・・と思っていたが・・・昨日、虹野さんから・・・(BGM:告白時のメロディー開始)

「あなたが・・・好きです。  ずっとあなただけを応援したい。」

伝説の樹の下で、女の子からの告白で出来たカップルは、永遠に幸せになれる・・・

わが母校、きらめき高校に伝わる伝説だった。

 

「(・・・ぇ、ねぇってば)」(BGM:一時停止)

 

昨日、その樹の下で彼女が俺に・・・。(BGM:一時停止時点から開始)

「明日、二人だけの卒業パーティしたいな。  来て・・・くれるかな。」

「もちろん・・・喜んで」

そして俺は今ここにいる。(BGM:フェードアウト)

 

「(お〜〜い、き・い・て・る・か〜〜い)」

「これも、俺の根性と努力の賜物だぁ〜〜〜!!!」

「(え?!!!)」

「はっ!はっ!は・・・え?」

気が付くとインターホンに向かってガッツポーズを取っていた。(汗)

キョロキョロ

辺りを見渡すと、通り過ぎる人々が俺を見てクスクス笑いながら通り過ぎている。

益々、顔が熱くなってくる。

「(ど〜〜したの?早く上がってきて)」

「あ、ああ・・・」

ガチャリ、と、ちょっと高級感がある扉を開け中に入った。

「あ、あの〜〜」

入ると廊下があり、玄関の直ぐ脇に虹野さんがいるはずであるキッチンがある。

しかし、人の気配がしない・・・とうより留守?

(この後どうしようか、ひょっとして隣と間違えた?・・・という事は無いと思うが・・・)

一度外に出て確認しようと、180度反転してドアに手を差し伸べた時

「駿太く〜〜ん、私、い〜まぁ、2階のぉ〜自分の部屋にいるのぉ〜〜、上がってきてぇ〜〜」

「わかったぁ〜〜」

靴を脱ぎ

「おじゃましま〜〜す」

 

彼女の家に行くのはこれで二回目だ。

一回目は・・・2年の時・・・そうあれは(省略)。(BGM:虹色の青春でひたすらかかっていた、あのメロディー開始)

あの時、神社で虹野さんが熱で倒れちゃって・・・(省略)

彼女の部屋で看病したっけ。

虹野さんのご両親にも会ったし、結構好印象のようだ。

元はといえば、俺がレギュラーに・・・(省略)

その時の誤解で・・・(省略)(BGM:虹色の青春でひたすらかかっていた、あのメロディー停止)

 

俺は階段を上りながら、そんな事を考えている内に、彼女の部屋の前に立っていた。

ドアのノブに手を掛けたが・・・。

(おっと、ノックしないとな)

コン!コン!

「ちょっとまってて」

ガサゴソ、ガサゴソ・・・

ドアの向こうで何やら物音がする。

数十秒、いや数分・・・実際には、ほんの数秒だと思う。

「もういいよ〜〜」

ドアの向こうから声が聞こえる。

ガチャ・・・虹野さんの部屋のドアを開けた、その時。

パーーーン

クラッカーが鳴り響いた。

心臓が止まりそうだったが、

(根性でがんばったよ、虹野さん!)

「卒業!おめでと〜〜〜〜!!」

虹野さんの元気な声が部屋に響いた。

「うん・・・ありがとう。・・・虹野さんも・・・おめでとう」

これから、二人だけの卒業パーティだ!!

 

END?(笑)

 

 

戻る